射出成形の不具合について
射出成形の不具合について解説します。ここでは射出成形で不具合が発生する原因・要因を成形条件(充填速度、溶融、固化、保圧力)、金型(金型温度、ガス抜き【エアベント】、ゲート、ランナー、スプルー、エジェクトピン【エジェクタピン】、パーティングライン)、成形機(スクリュー、シリンダー、ノズル)、製品形状(厚肉、薄肉、アンダーカット)、樹脂、材料(流動性、水分、乾燥、異物混入)のそれぞれの観点からご案内します。
目次

射出成形で不具合が発生する原因・要因
射出成形で不具合が発生する原因・要因をご紹介します。ここでは射出成形で不具合が発生する原因・要因を成形条件(充填速度、溶融、固化、保圧力)、金型(金型温度、ガス抜き【エアベント】、ゲート、ランナー、スプルー、エジェクトピン【エジェクタピン】、パーティングライン)、成形機(スクリュー、シリンダー、ノズル)、製品形状(厚肉、薄肉、アンダーカット)、樹脂、材料(流動性、水分、乾燥、異物混入)にわけて解説します。
成形条件
射出成形で不具合が発生するのは成形条件が大いに関係しています。成形条件はさまざまですが、ここでは充填速度、溶融、固化、保圧力のそれぞれの観点から射出成形の不具合を解説します。
充填速度
射出成形の不具合は、樹脂が金型内に流れ込む速さである充填速度が大きく関係しています。充填速度が速すぎても遅すぎても、不良の原因になります。まず充填速度が遅い場合ですが、充填速度が遅いと樹脂が流れている途中で冷えてしまい、流動性が低下し、さまざまな不具合が発生します。具体的には、樹脂が金型の隅まで届かずに発生するショートショット(充填不足)や合流部がしっかり溶着しないウェルドラインの強度低下を招きます。また、充填速度が遅いと、樹脂の流れた跡が目立つフローマークなどの表面不良が発生します。これらの不具合が起こるのは、充填速度が遅いがゆえに樹脂が途中で固まってしまったり、圧力が十分に伝わらないためです。一方、充填速度が速すぎると樹脂や空気の挙動が乱れ、さまざまな不良が発生します。具体的には空気が圧縮されて高温になり焦げてしまう焼け(ガス焼け)や樹脂が金型の隙間から漏れるバリ、フラッシュ、樹脂が蛇行して流れ、見た目が悪化するジェッティング、ガスや水分が銀白状の筋になって現れるシルバーストリークなどが発生します。充填速度が速すぎると、空気の逃げ場がなく圧縮されるのに加え、急激な流入で流れが不安定になるため、これらの不具合が発生します。したがって成形品の品質を保つには、適切な充填速度を設定することが極めて重要で、適切な充填速度に設定することで樹脂が均一に流れるのに加え、金型内の空気が適切に排出されるようになり、製品の外観と強度がともに安定します。
溶融
射出成形の不具合は、樹脂が加熱されて溶けた状態、いわゆる溶融の状態によって大きく左右されます。溶融が不十分でも過剰でも、さまざまな不具合が発生します。溶融が不十分な場合、つまり樹脂がしっかり溶けていない状態の不具合としては、ショートショット(ショートモールド)があります。ショートショットは、溶融不足で流動性が低く、金型の隅まで届かない不具合です。ほかにも溶融が不十分の場合だと、合流部がしっかり融合しないウェルドライン強度低下や、樹脂が均一に流れず表面が荒れるフローマーク、艶ムラなどの外観不良、固まりがそのまま残った未溶融物の混入などの不具合が発生します。溶融が不十分になるのはさまざまな原因がありますが、シリンダーの温度が低かったり、スクリューの混練不足が考えられます。また、射出速度が遅いのも一因となります。反対に溶融が過剰な場合も不具合が発生します。溶融が過剰な場合の不具合としては樹脂が熱劣化して茶色や黒色になる焼け(変色・焦げとも)、分解ガスが表面に現れるシルバーストリーク、分子が切れて材料特性が低下して起こる強度低下、粘度が下がりすぎて漏れやすくなるバリ、フラッシュなどがあります。なお、溶融が過剰になる原因としては、シリンダ温度やスクリュー回転数が高すぎたり、滞留時間が長いことが考えられます。ほかにも溶融状態のバラつき、つまり溶融が均一でない場合もさまざまな不具合が起こります。具体的には、寸法のばらつきや外観ムラ、物性の不安定などが生じますが、これらが発生する原因としては混練不足や材料の乾燥不良、温度分布のムラが考えられます。
固化
射出成形の不具合は、溶けた樹脂が冷えて固まる現象である固化のタイミングや状態によって大きく影響されます。固化が早すぎる、遅すぎる、不均一になることで、さまざまな不良が発生します。固化が早すぎる、つまり樹脂が金型内で十分に行き渡る前に固まってしまう不良としてはショートショット(ショートモールド)、いわゆる充填不足があります。ほかにも合流部が固化し始めていて、しっかり融合しないウェルドライン、保圧が伝わらず、内部に空洞ができるヒケ・ボイド(boid)などの不具合が発生します。ちなみに固化が早すぎる原因としては、金型温度と樹脂温度が低い、充填速度が遅いことが考えられます。一方、固化が遅すぎてもさまざまな不具合が発生します。具体的には、固化が遅く、樹脂が金型の隙間からはみ出すバリ(フラッシュ)、柔らかい状態で取り出され、形が崩れる変形・反り、十分に固まっておらず、金型から外れにくい離型不良などがあります。固化が遅すぎるのは、金型温度や樹脂温度が高すぎるのに加え、冷却時間が短いためです。また、製品内で固化の進み方に差がある固化の不均一によってもさまざまな不具合があります。具体的には部分ごとに収縮差が生じて歪む反り、内部に応力が残り、後からクラックが発生する残留応力による割れ、収縮のバラつきで精度が出ない寸法不良などが発生します。これらが発生するのは肉厚の違いや冷却回路の不均一によるためで、ゲート位置も影響します。
保圧力
射出成形の不具合は、充填後に樹脂を押し続けて収縮を補う保圧のかけ方が大きく関係します。保圧不足はもとより、保圧が過多になったり、保圧時間が不適切な場合、さまざまな不具合が発生します。具体的には保圧が不足、つまり保圧が弱かったり、保圧時間が短いと、樹脂の収縮を十分に補えず不具合の原因になります。主な不具合としては、表面がへこむヒケ(シンクマーク)、内部に空気や空洞ができるボイド(boid、内部空洞)、収縮が大きくなり、狙い寸法より小さくなる寸法不良などが発生します。また、圧力不足で融合が弱くなるとウェルドラインの強度低下を招きます。なお、保圧が弱くなる原因としては、保圧圧力そのものが低いことや保圧時間が短く、ゲートシール前に終了してしまうことが考えられます。一方、保圧過多の場合もさまざまな不具合が発生します。保圧過多は保圧をかけすぎ、樹脂が過剰に押し込まれた状態ですが、保圧過多になると樹脂が金型の隙間から漏れるバリが発生しやすくなります。また、必要以上に樹脂が入り、内部応力が増加する過充填(オーバーパック)、部分的な圧力差で変形する反り(ワーページ)、金型に強く食いつき外れにくい離型不良などを招きます。過剰な保圧は、最悪の場合、金型の損傷につながるので要注意です。保圧をめぐっては、いつまで圧力をかけるかが非常に重要です。ゲートが固まるタイミング、いわゆるゲートシール前に保圧が終了してしまうとヒケや寸法ばらつきが発生しますが、ゲートシール後も保圧を継続すると、無駄な応力が増加してしまいます。そのためゲートシールまでが有効な保圧時間となります。
金型(キャビティ)
射出成形の不具合は金型(キャビティ)にも起因します。ここでは金型温度、ガス抜き(エアベント)、ゲート、ランナー、スプルー、エジェクトピン(エジェクタピン)、パーティングラインのそれぞれの観点から不具合の原因を探ります。
金型温度
金型温度は射出成形の不具合と大いに関係します。金型温度が低すぎて、金型が冷たすぎると、樹脂が急激に冷やされてしまいます。結果、樹脂が金型に触れた瞬間に固化しやすくなり、流動性が低下します。そのため早期に固化し、樹脂が末端まで流れないショートショット(充填不足)、合流部が冷えており、十分に融合しないウェルドライン強度低下、表面が荒れ、外観が悪化するフローマーク・艶(ツヤ)不良、保圧が伝わりにくくなるヒケ・ボイド(boid)などが発生します。反対に金型が熱すぎると、樹脂がなかなか固まらない状態が続きます。そのため固化が遅れるほか、樹脂の粘度が低い状態が長く続きます。結果として樹脂が柔らかい状態で漏れ出すバリ、型に密着して製品が取り出しにくくなる離型不良、冷却不足で形状が安定しない変形・反りを招きます。また、冷却時間が長くなればサイクルタイムも増加します。ほかにも金型温度が不均一になり、金型内で温度にムラがあると冷却速度の差で収縮バランスが崩れてしまい製品が反る不具合が発生します。さらに部分ごとに収縮率が異なる寸法不良や表面状態が均一にならない外観ムラも起きやすくなります。これらを回避するには冷却回路の設計を見直したり、水温や流量のばらつきを是正することが重要です。
ガス抜き(エアベント)
射出成形の不具合を防止するにはガス抜き(エアベント、空気抜き)が適切であるかが重要です。ガス抜きは、金型内の空気やガスを外へ逃がす仕組みですが、その良し悪しによって品質は大きく変わります。たとえばガス抜きが不足していると、空気が圧縮され高温になり、樹脂が焦げる焼け、いわゆるガス焼けが発生します。また、空気が邪魔をして樹脂が流れきらないショートショット、ガスの影響で合流部が弱くなったり目立ってしまうウェルドライン、ガスや揮発成分が筋状に現れるシルバーストリークなどを招きます。これらが発生するのはベント(ガス抜き溝)が不足、あるいは詰まっていたり、樹脂から発生したガスが逃げないためです。反対にガス抜きが過剰な場合も不具合が発生します。ガス抜きが過剰になるのは、ガス抜きが広すぎたり深すぎたりするためですが、過剰になるとガス抜き部から樹脂が漏れるバリやベント跡が製品に転写される外観不良を招きます。これらを回避するにはベント溝の深さや面積を適切に修正したうえ、金型の合わせ面の精度を確保することが重要です。ほかにもガス抜き位置が適切でないとガスが溜まりやすい部分で発生し局所的な焼けが生じます。さらに流れの末端にガス抜きがないと充填不良が起きたり、ガスの滞留位置によって不良が偏ると外観ムラが残ります。
ゲート
射出成形の不具合を防ぐには、樹脂が金型内へ流れ込む入口ゲートの設計や状態を適切に保つことが重要です。ゲートが小さすぎる場合、樹脂の流れが制限され、結果として樹脂が十分に流れ込まないショートショットとなります。また、流動が弱く、合流部がしっかり融合しないウェルドライン、保圧が製品内部まで伝わりにくいヒケ・ボイド(boid)の原因となります。ゲートが小さすぎると、圧力損失が大きくなるのに加え、ゲートが早く固化、いわゆるゲートシールするため不具合が起きやすくなるので要注意です。反対にゲートが大きすぎると、樹脂が過剰に流れ込みやすくなります。結果、過充填になりやすく、樹脂が漏れるバリ(フラッシュ)が起きます。さらにゲート部が大きく目立つ外観不良が起きるのに加え、ゲートが固まるまで時間がかかるためサイクルタイム(サイクル・タイム)が伸びます。ほかにもゲート位置が適切でない場合にも不具合が発生します。主なものでは強度が必要な部分に出てしまうウェルドラインの発生位置不良やガス抜きがうまく機能せずガスが溜まるエアトラップ、充填・収縮バランスが崩れる反り、圧力のかかり方に偏りが出る寸法不良などがあります。ゲートの位置が適切でないと、樹脂の流れ方が悪くなりますので要注意です。さらにはゲートが固まるタイミング、いわゆるゲートシールも重要で、早く固まりすぎて保圧が効かないとヒケや寸法ばらつきが出るのに加え、遅すぎて過剰に樹脂が入ると内部応力が増加します。
ランナー
ランナーは溶融樹脂をゲートまで運ぶ流路ですが、ランナーの設計や状態は射出成形の不具合の発生原因となります。ランナーが細すぎる、つまりランナーの断面が小さいと、樹脂の流れに大きな抵抗が生じます。結果、圧力損失が大きく、末端まで樹脂が届かずにショートショット(充填不足)が起きたり、流動が弱く、合流が不十分となってウェルドライン強調・強度低下につながります。さらに保圧が製品まで十分に伝わらずにヒケやボイドを招きます。ランナーの断面が小さいと圧力・温度が低下し内部で早期に固化してしまうため、ランナーを適切に設計することが重要です。反対にランナーが太すぎたり、大きすぎると、樹脂の滞留や過剰供給が起こります。結果、過充填になりやすくなり、バリが起きやすくなります。さらにランナーの冷却に時間がかかるためサイクルタイム(サイクル・タイム)が伸びるほか、不要な樹脂が多くなるため材料ロスが増えます。また、ランナーバランス不良による不具合も起こります。複数個取りの場合、ランナーの長さや形状が不均一だと流れに差が出てしまい、ある製品は満たされ、別の製品は未充填という充填バランス不良を招きます。
スプルー
射出成形の不具合は、射出機ノズルから金型内へ樹脂を最初に導く主流路であるスプルーの設計や状態によっても発生します。スプルーが細すぎる、つまりスプルー径が小さいと、樹脂の流れに強い抵抗が生じます。結果、圧力損失が大きく、樹脂が金型内まで十分に届かないショートショット(充填不足)や流動が弱く、融合が不十分となるウェルドライン、保圧が製品まで伝わりにくくなることによってヒケ・ボイドが発生します。反対にスプルーが大きすぎると、樹脂の滞留や過剰供給が起こり、過充填によるバリが起きるほか、スプルーの冷却に時間がかかるためサイクルタイムが伸びます。ほかにもスプルーのテーパーや表面状態が適切でない場合、金型にスプルーがくっついて抜けない離型不良や樹脂が糸状に伸びる糸引き(ドローイング)が起きやすくなります。
エジェクトピン(エジェクタピン)
射出成形の不具合を防ぐには、エジェクトピン(エジェクタピン)を適切な本数で正しい位置に配置することが重要です。エジェクトピンの本数や配置が適切でない場合、一部だけ押し出され、製品が歪む反りを招きます。また、製品が金型に張り付き、うまく取れない離型不良や特定箇所に負荷が集中する不具合につながります。エジェクトピンの押し出し力が強すぎるとさまざまな不具合が発生します。主な不具合としては、表面に跡が残るピン跡(白化・凹み)や応力で製品が割れるクラック(割れ)などがあるほか、柔らかい状態で無理に押し出すと変形してしまいます。また、エジェクトピンの仕上げや状態によっても不具合が起きます。ピンに擦り傷や引きずり傷があれば表面に傷がつくほか、ピンが汚れていると製品に異物が付着します。さらにピンが戻り不良などの動作不良を起こすと、ピンが戻らず次工程で不具合が発生します。
パーティングライン
射出成形の不具合を防ぐには、固定側と可動側の金型の合わせ面であるパーティングラインを正しく設計することが重要です。パーティングラインがずれている、つまり金型の合わせ面にわずかな隙間があると、樹脂が隙間から漏れ出るバリやパーティングラインに沿って段差や線が目立つ外観不良となります。パーティングラインにすき間が生じるのは型締め力不足や金型の摩耗・傷、異物の噛み込みが考えられます。ほかにも固定側と可動側の位置が正確に合っていないと、製品にズレた段差ができたり、設計通りのサイズにならない寸法不良、部品同士が合わなくなる組付け不良が起きやすくなります。
成形機
射出成形の不具合には成形機も関係しています。ここではスクリュー、シリンダー、ノズルの部品ごとにわけて不具合の発生原因を解説します。
スクリュー
射出成形の不具合は、樹脂を溶かして混ぜ、送り出す装置であるスクリューの状態や設定が影響します。スクリューの回転数や背圧などの条件が不適正な場合、樹脂が十分に溶けず固まりが残る溶融不良が起きやすくなります。また、せん断発熱で樹脂が劣化する焼け・変色、ガスや水分が抜けず筋状に現れるシルバーストリークなどが発生します。また、長期間使用によりスクリューやシリンダーが摩耗した状態になると、計量不安定となり、ショットごとのばらつきが大きくなります。あわせて充填不足や過充填のばらつきが起きやすくなり、品質が不安定となります。ほかスクリューの設計が不適切、つまり使用材料や成形条件に対してスクリューの仕様が合っていない場合、混練不足による外観不良や色ムラ・材料ムラ、ガス残りによる不良が起きやすくなります。
シリンダー
射出成形の不具合を防ぐには樹脂を加熱して溶融・搬送する加熱筒であるシリンダーの温度管理が重要です。シリンダー温度が低すぎると、流動性が低く、金型の隅まで届かないショートショット(充填不足)の発生原因となります。反対にシリンダー温度が高すぎると樹脂が熱劣化して焼け・変色するほか、分子が分解され強度低下、粘度が下がりすぎてバリが発生します。なお、シリンダー温度が高すぎるのはヒーター温度が高すぎたり、長時間の加熱(滞留)によるものです。また、シリンダーが摩耗や劣化していると計量不安定となり、樹脂供給が一定にならなくなります。あわせて充填がばらつくため製品ごとの品質差が出てしまいます。
ノズル
射出成形の不具合を防ぐにはノズル温度を適切に保つことが重要です。ノズル温度が低すぎるとノズル部で樹脂が冷えてしまいます。結果、ノズルで流れが止まり、十分に供給されずに製品が欠けるショートショットや射出圧が金型まで伝わらずに圧力損失が増大します。さらには樹脂が途中で固まり、挙動が不安定となり、ノズルから樹脂が糸状に垂れる糸引き(ドローイング)が起きやすくなります。反対にノズル温度が高すぎてノズル先端で樹脂が柔らかすぎる状態が続くとさまざまな不具合が発生します。一例を挙げると、糸引きや樹脂が自然に漏れ出るタレ(ドリップ)、高温で樹脂が分解する焼け・劣化などを招きます。
製品形状
射出成形の不具合は製品形状にも起因します。ここでは厚肉、薄肉、アンダーカットのそれぞれの注意点などをご案内します。
厚肉
厚肉製品を射出成形で製造する場合、いくつか注意点があります。厚肉が原因で起こる主な不具合はヒケ(シンクマーク)です。厚肉部は冷却に時間がかかり、内部が収縮します。その結果、表面が引っ張られてへこみ(ヒケ)が発生します。特にリブの付け根やボス周辺など、局所的な厚肉で発生しやすいので要注意です。また、厚肉部分は外側から先に固まり、内部が収縮しても樹脂が補充されにくくなります。その結果、内部に空洞(ボイド、boid)ができやすくなります。さらに厚肉と薄肉が混在していると、冷却速度に差が出ます。これにより収縮量が不均一になり、製品が反ったり歪んだりします。
薄肉
薄肉製品は射出成形で不具合の出やすい製品形状のひとつです。薄肉部分では、樹脂が流れにくい、つまり流動抵抗が大きい、すぐに冷えて固まりやすいという特徴があります。このため、樹脂が十分に行き渡らなかったり、圧力が伝わらなかったりして不具合が発生します。厚みが薄い製品で発生しやすい不具合はショートショットです。薄肉部は樹脂が途中で固まりやすく、最後まで充填されません。そのため製品が欠けたショートショットのリスクが高まります。また、薄肉部では樹脂の流れが分断されやすく、合流部分で線状の跡が残り、ウェルドラインが目立ちやすくなります。ほかにも薄肉部では流れが不安定になり、表面に筋状の模様が出るフローマークが出やすくなります。これら薄肉ならではの不具合を避けるには極端な薄肉を避けるのはもとより、流動距離を短くする設計をしてゲート位置の最適化を図るとともに射出速度や温度を上げて流動性を改善し、材料を流動性の高い樹脂に変更するなどの対応が効果的です。
アンダーカット
射出成形におけるアンダーカットは、不具合やトラブルの原因になりやすい重要な要素です。アンダーカットは、金型の開閉方向(抜き方向)に対して引っかかる形状のことを指しますが、アンダーカットがあると製品が金型に引っかかり、無理に取り出す必要があるため、離型時に問題が発生します。そのひとつが離型不良で、アンダーカット部が金型に食い込み、スムーズに取り出せなくなる不具合です。無理に押し出したり引き抜いたりすると、樹脂に応力がかかり、その結果、変形したり白くなる、いわゆる応力白化を招きます。ほかにもアンダーカット部が擦れたり引っかかったりして、表面キズをはじめ欠けや割れが発生することがあります。これらを回避するには、設計段階でアンダーカットをなくす形状にしたり、必要な場合はスライドコアやリフター機構を使用するのが効果的です。あわせて適切な抜き勾配をつけ、離型しやすい材料・表面処理を検討するなどの対策が求められます。
樹脂、材料
射出成形の不具合を回避するには樹脂や材料段階からの適切な管理が重要です。ここでは流動性、水分、乾燥、異物混入のそれぞれの観点で不具合の対策を解説します。
流動性
射出成形では材料の流動性が不具合の発生リスクに大きく影響します。流動性は、溶けた樹脂が金型内をどれだけスムーズに流れるかという性質ですが、流動性が悪い、つまり低いと、樹脂が途中で止まる、末端まで充填できない、圧力が伝わらないといった現象を招きます。具体的にはショートショットやウェルドラインが起きやすくなります。
水分、乾燥
射出成形では樹脂やペレットに水分が含まれたまま加熱されると、水分が蒸発してガスになる、樹脂が分解(加水分解)するといった現象が起こります。これが外観や強度の不良品につながります。水分・乾燥不足による主な不具合としてはシルバーストリーク(銀条)があります。ほかにも水分がガス化して内部に残ることで、気泡や空洞が発生するボイド(boid)、水分によるガスが圧縮されて高温になり、樹脂が焼けたり変色するといった不具合が起きます。
異物混入
射出成形における不具合は、異物混入も大きな原因のひとつです。異物混入とは、樹脂以外のものが材料や成形工程に入り込むことですが、異物が混ざると溶けた樹脂が均一に金型に流れなくなります。結果、製品が均一に固まらない、局所的に弱くなるといった問題が発生します。異物が高温で分解・炭化することで、黒ずみや焦げが発生することもあるので要注意です。
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