ナットインサート成形について
ナットインサート成形について解説します。ナットインサート成形はその名のとおり、金属製のナットを圧入によってプラスチック樹脂に挿入し結合する技術です。ナットをインサートすることで結合箇所の強度が飛躍的に高まり、成形品の信頼性が向上します。プラスチック素材の結合力を強化できることから、ナットインサート成形は、携帯電話や携帯ゲーム機、テレビ、冷蔵庫を含む家電製品、照明、PC、プリンターを含むOA機器などに頻繁に使用されています。大型製品では自動車のエンジンやランプ、電車、航空機部品でもナットインサートが採用されています。
なお、プラスチック成形品の強度向上を図るためにリベット(ブラインドリベット含む)をインサートする製品も多数あります。通常のリベットやブラインドリベットをインサートすることで締結力が大幅に向上します。三光ライト工業はナットインサート成形で豊富な実績を有しています。ここでは三光ライト工業のナットインサート成形品の実績や関連設備をご紹介します。あわせてナットインサート成形の挿入方法やインサートナットの形状、ナットインサート成形で使用するプラスチック樹脂、ナットインサート成形とナットアウトサート成形の違いなどを解説します。
目次
三光ライト工業のナットインサート成形品実績
三光ライト工業はナットインサート成形でこれまで様々な製品を手がけてきました。ここでは弊社が製造したナットインサート成形品を一部だけご紹介します。ここでご案内した製品以外にも弊社は様々なナットインサート成形品に対応いたしますので、まずはお気軽にご連絡ください。
三光ライト工業のナットインサート成形品生産体制
ナットインサート成形は結合、締結箇所の強度を大幅に高める成型方法で、射出成形に含まれる技術のひとつです。三光ライト工業は真空成形や2色成形、LIM成形と同様、射出成形においても充実した生産体制を整えています。弊社は埼玉工場に型締め力360トン級の全自動射出成形機をはじめ各工場に最新鋭の設備を豊富に取り揃えています。また、弊社は成形品のみならず金型も自社工場で製作しています。
弊社は中原工場に金型製作部門を構えており、最新鋭のマシニングセンターやNC放電加工機、NCワイヤー放電加工機、細穴加工機、フライス盤、平面研削盤、成形研削盤、レーザー溶接機、精密高速旋盤、直立ボール盤、3次元CAM/3次元CADなどを設備しています。金型製作から成形品の量産に至るまで弊社は自社工場で一貫対応しているため、低価格、短納期でお客様のご要望にフレキシブルに対応いたします。
ナットインサート成形の挿入方法
ナットインサート成形の挿入方法をご案内します。成型後にインサートナットを挿入する方法(埋め込み方法)は大きく分けて「圧入方式」「拡張方式」「熱圧入方式」の3つがあります。ここでは「圧入方式」「拡張方式」「熱圧入方式」のそれぞれの技術的特長などを解説します。
圧入方式
圧入方式はナットインサート挿入方法のなかで最も一般的な方法となります。圧入方式はポンチなどの機材を用いて圧入し、挿入します。熱圧入方式と異なり熱源を使用しないのが特長です。ボス径を太くすることで、ボス割れを防ぐことができますが、素材によっては熱圧入方式に切り替える必要があります。圧入に使用するインサートナットとしては「ダッヂインサート」「ビットインサート」「ウルトラサート」などがあります。ダッジインサートは、成型後使用の拡張方式のインサートナット圧入式で、先端ローレット部は十字に割りが入り、 内側に拡張板が入った状態で絞られた形状をしています。樹脂材にナット先端が外側に拡げられ、ローレットが樹脂に強固に食いつくのが強みです。ビットインサートは、保持力とコストのバランスに優れたインサートナットで、圧入式の基本形ともいえます。ウルトラサートは、極めて保持力の強い成型後熱圧入インサートで、使用条件に合わせ使い分けすることで製品の保持力をさらに高めます。
拡張方式
拡張方式ではまず、インサートナットをプラスチック素材に打ち込み、先端部分を拡張することで素材に固定します。そのうえでインサートナットをプラスチック素材にハンマーで打ち込んでから、専用ポンチによりインサートナットの先端部分を拡張します。そのため、素材側のナットをはめ込むボス形状にあまり影響を及ぼさないのが特長です。また熱源も不要です。
熱圧入方式
熱圧入方式は、拡張方式と異なり熱源を用いた圧入方法となります。はんだごてや温度調整器付熱溶着機などを用いてインサートナットに熱を加え、挿入します。熱を加えることで挿入するプラスチック素材が柔らかくなり、ポンチなどを使えばインサートナットを圧入しやすくなります。変形したプラスチック素材は、時間が経つと固まり強度が高まります。圧入方式と違い、ボス形状に影響をあまり受けることなく圧入できるのが特長です。
インサートナットの形状
インサートナットの形状をご案内します。成型後インサートナットは大きく分けて「スタンダードタイプ」と「フランジタイプ」の2種類があります。さらにスタンダードタイプは片面と両面の2種類があります。ここでは「スタンダードタイプ(片面・両面)」と「フランジタイプ」のそれぞれの特長について解説します。ちなみにインサート後の抜け止め機能として形状面で欠かせないのがローレットです。ローレットとは締結部品の側面に細かい凹凸や切り込みを入れる加工技術で、平目ローレットと綾目(文目、アヤメとも)ローレットの2種類があります。平目ローレットは回転方向に強く、綾目ローレットは回転、抜けの両方に強さを発揮します。
工法面では、平目ローレットは圧造加工により仕上げることも可能であり、綾目ローレットは転造加工による加工が一般的です。近年さまざまなインサートナットが開発されており、中央溝部形状が四角形になった全く新しいタイプのインサートナットもあります。従来の綾目インサートに比べ強度が大幅に向上するなど、機能性が高まっています。頭部が小判形状になったインサートナットなどもあります。インサートナットの強度は挿入方法、相手材材質、相手材穴径、相手材ボス形状などの使用状況により変化するので注意が必要です。 また、削り許容差・内径寸法などをクリアした製品を使用することが極めて重要となります。
スタンダードタイプ
インサートナットのスタンダードタイプはその名のとおりもっとも一般的な形状となります。スタンダードタイプには片面と両面の2種類があり、形状に違いがあります。片面タイプと両面タイプの違いを解説します。
片面
インサートナットでスタンダードタイプといえば通常、片面タイプを指します。片面はその名のとおり、面取りがナットの片面のみとなっています。 そのため埋め込む際は圧入方向が決まっているのが特長です。なお、片面は両面に比べ安価です。
両面
両面は片面と異なり、インサートナットの両側が面取りされているタイプです。そのため圧入の際どちらからでも挿入しても良いのが特長で作業性に優れます。
フランジタイプ
インサートナットのフランジタイプの大きな特長はナットの一方にツバがついている点です。そのため圧入の際、取り付けの方向は決まっています。ただし使用条件に左右されないといったメリットがあります。フランジボルトとも呼ばれることがあります。フランジボルトには特殊ナット・ワッシャーがセットになった製品もあります。
ナットインサート成形で使用されるプラスチック樹脂
ナットインサート成形で使用されるプラスチック樹脂をご紹介します。ここでは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のそれぞれの特長などを解説します。
熱可塑性樹脂
ナットインサート成形では熱可塑性樹脂がひんぱんに使用されます。使用する熱可塑性樹脂は多岐にわたりますが、一例を挙げるとPMMA(メタクリル酸メチルエステル)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などが該当します。PMMAはアクリル樹脂とも呼ばれる通り、透明度が高い樹脂で、インサート成形メーカーが使用する主な熱可塑性樹脂のひとつです。プラスチックと呼ばれるものは限りなくありますが、その中でもPMMAは、最も透過性が高い材質です。PMMAは耐候性にも優れることから屋外でも問題なく使用できる点も利点といえます。PMMAは射出成時の熱と圧力でフィルムと一体化した製品を成形するフィルムインサート成形の材料としても幅広く使用されています。PBTは結晶性の汎用エンジニアリングプラスチック(エンプラ、特殊樹脂類)で、電気特性、耐薬品性、成形加工性などに優れています。これらの特性を生かし、インサート成形メーカーでは、PBTを使って電気・電子、自動車部品、OA機器、医療、精密電気部品などを製造しています。
熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂はフ熱可塑性樹脂よりも耐熱性が高いのが特長で、エノール樹脂 (PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂 (UP)、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)などが含まれます。熱硬化性樹脂のナットインサート成形は熱可塑性樹脂に比べて高度なノウハウが必要となるため、使用する樹脂の特性を十分に把握しておくことが大前提となります。
ナットインサート成形とナットアウトサート成形の違い
インサートナットを埋め込む方法は「成型時インサート」と「成型後インサート」(アウトサート)に分類されます。成型時インサートは、インサートナットを金型にセットした後にプラスチック樹脂を流し込んで埋め込む方法です。インサートナットの周りにプラスチック樹脂を流し込むのと同時に成型するため、ナットをしっかり固定できるのが強みです。成型時インサートは熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のどちらでも使用可能となります。
一方、成型後インサート(アウトサート)は、成型済みのプラスチック樹脂に埋め込む方法となります。成型後に埋め込む位置を決められるため、設計の自由度が高く、取り扱いしやすいなどのメリットがあります。圧入方法により、使用する樹脂は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の制限があるので注意が必要です。なお、アウトサート成形で使用するナットはアウトサートナットとも呼ばれます。
ナットインサート成形は三光ライト工業にお任せください
三光ライト工業はナットインサート成形を含む射出成形で豊富な実績を有しています。射出成形は切削など他の工法に比べ自由で複雑な形状の製品を作ることが容易かつ他の工法より短いサイクルで製造できるなどのメリットがあります。弊社は射出成形の強みを最大限に発揮し、寸法正確性の高い精度に優れたプラスチック加工品を低価格、短納期でご提供します。オリジナル製品だけでなく、規格品も幅広く承ります。弊社はナットインサート成形を含む射出成形以外にも、真空成形や2色成形、LIM成形などの特殊技術を有しています。
インサート成形では金属や端子、ICタグ、ボルト、ネジ(低頭ネジ・極低頭ネジ含む)などの異素材を高度なノウハウで一体化します。なお、ネジは切削加工品はもとより、冷間圧造(単に圧造とも)も対応可能です。クリンチングファスナーの圧入についてもぜひご相談ください。弊社は品質管理も徹底しており、ISO9001を認証取得済です。
なお弊社は、マシンに金型を取り付け、溶融した原料合金を金型に高速・高圧で短時間充填することで製品を作り出す鋳造技術のダイカストには対応しておりませんのでご了承ください。前述のとおり、弊社は成形品のみならず金型も国内自社工場で製作しており、試作から量産に至るまで一貫対応しています。大量生産だけでなく多品種少量生産にも柔軟にお応えします。プラスチック成形品のことはなんでも三光ライト工業にお任せください。ご連絡お待ちしています。