真空成形材料 ポリカーボネートについて
真空成形材料のひとつにポリカーボネートがあります。ポリカーボネートは、熱可塑性樹脂の一種であるポリカーボネート樹脂が原料のプラスチック素材です。衝撃に強く、透明性があり、耐熱性、難燃性、寸法精度もあわせ持つポリカーボネート。ここでは真空成形材料のポリカーボネートの材質特性やポリカーボネートを使った主な成形品をご紹介します。あわせて、他の熱可塑性樹脂との比較も交えてポリカーボネートを詳しく解説します。
目次
真空(圧空)成形で使用するポリカーボネートの材質特性
真空(圧空)成形で使用するポリカーボネートの材質特性を解説します。ポリカーボネートは耐熱性、耐衝撃性、難燃性、寸法精度といった特長を兼ね備えています。ここでは耐熱性、耐衝撃性、難燃性、寸法精度のそれぞれの特性についてご説明します。なお、圧空成形と真空成形は厳密には異なる技術ですが、軟化した樹脂シートを密着、接着させて吸引し固化させる点で同じであるため、ここでは圧空成形と真空成形を同じ技術と位置づけて解説します。
耐熱性
ポリカーボネートは耐熱性に優れ、およそ130℃までの熱に耐えることができます。これはプラスチックのなかでも極めて高い水準です。またポリカーボネートは紫外線にも強い対候性も兼ね備えているため、屋根や看板などの屋外利用にも最適な素材です。さらにポリカーボネートは熱に強いのに加え低温にも耐えられ、下限はマイナス40℃ほどとなっています。
耐衝撃性
ポリカーボネートはプラスチック類でもっとも耐衝撃性に優れます。ポリカーボネートの耐衝撃性は同じ厚みのガラスの約200倍、アクリルの約30倍ともいわれます。こうした特性を生かし水槽やパーテーションなどの一般用途に加え、戦闘機の風防や防弾用の盾のような特殊用途にも用いられます。ほかにもレンズ、DVD基板、車のヘッドランプ、スマートフォンのケース、スマートフォンのボディ、高速道路の遮光板、看板、建設機械のボディなどにも使用されています。
透明性
ポリカーボネートはガラスやアクリルと同様、透明度が高い素材です。ポリカーボネートの光線透過率は85~91%と、ガラスやアクリルとほぼ同等の透明度を有しています。そのうえ重量はガラスのほぼ半分にとどまるほか、耐衝撃性や難燃性などに優れることから使用機会は極めて多いといえます。
難燃性
ポリカーボネートは難燃性でも高い特性を示します。着火しても燃え広がらず火元が離れれば自然に消火する自己消火性も兼ね備えているのに加え、連続耐熱温度も高いのが特長です。一方、アクリルは可燃性で連続耐熱温度はポリカーボネートのほうが高いので、特に火災に対する安全性が重視される建材としてはポリカーボネートのほうが使用頻度が高まっています。
寸法精度
寸法精度とは工作物の長さ、直径、厚みなど指定部分の寸法の正確さを指すものです。ポリカーボネートはこの寸法精度がプラスチックのなかでも優れた素材であるため、高い寸法精度が求められる成形品の材料として広く使用されています。近年プラスチック部品に対する寸法精度の要求レベルは一段と高まっており、こうした中、ポリカーボネートが持つ寸法精度は極めて重要な特性となっています。
真空成形によるポリカーボネートの主な成形品
真空成形によるポリカーボネートの主な成形品をご紹介します。ここでは医療機器、ゲーム機・アミューズメント機器、各種カバー、看板、航空機キャノピー、自動車部品・パーツについて述べますが、真空成形によるポリカーボネート成形品は各種トレイ(収納用、保管用、管理用、運搬用、搬送用)やブリスターパックなどを含めて極めて多岐に渡りますので、詳しくは三光ライト工業を含むプラスチック成形の専門メーカーにお問い合わせください。
医療機器
医療機器では計量カップ、人工透析器、輸液チューブのジョイント、医療用吸引器などをはじめ様々な機器がポリカーボネートで真空成形されています。医療機器は使用上の理由から耐衝撃性や透明性、耐熱性が求められることが多いため、ポリカーボネートがひんぱんに使用されています。
ゲーム機・アミューズメント機器
ゲーム機・アミューズメント機器でもポリカーボネートを真空成形して製造したものが数多く設置されています。ゲーム機やアミューズメント機器は、落下による破損リスクを抱えています。そのため耐衝撃性に優れたポリカーボネートは最適な素材であり、ゲーム機やアミューズメント機器のカバーにたびたび使用されています。
各種カバー
各種カバーの多くが真空成形によるポリカーボネート製となっています。耐熱性、耐衝撃性、難燃性、寸法精度といったポリカーボネートの特性を生かし、さまざまなカバーが製造されています。
看板
ポリカーボネートは前述のとおり、紫外線に強い対候性も兼ね備えているため、屋根や看板などの屋外利用にも広く使用されています。特に看板は真空成形によるポリカーボネート製品が占める割合が高く、さまざまな場所で使用されています。マイナス40℃~130℃まで耐えうるポリカーボネートは厳しい自然環境下でも劣化しにくい素材として大いに活用されています。
航空機キャノピー
ポリカーボネートは高い透明性に加え、その耐衝撃性は同じ厚みのガラスの約200倍、アクリルの約30倍ともいわれ、プラスチックのなかで極めて高い水準です。こうした特性を生かし、航空機や車の操縦席を覆う窓、いわゆるキャノピー(風防とも)に使用されています。ポリカーボネート製キャノピーは真空成形によって製造され、航空機や各種車両に装備されます。
自動車部品・パーツ
自動車部品・パーツではヘッドランプレンズ、テールランプ、ドアハンドル、メーターパネル、エアロパーツなどにポリカーボネートが使用されています。特にランプレンズは衝突により破損してしまう場合があるため、その製造には耐衝撃性能の高い素材が必須で、ポリカーボネートが採用される機会が増えています。なお、ランプレンズ、ヘッドライトカバーは真空成形によるケースが多くなっています。
真空成形で使用するポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂
真空成形で使用するポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂をご案内します。ここではPMMA(アクリル樹脂)、PVC(ポリ塩化ビニル、塩ビ)、ABS(アクリロニトリル 、ブタジエン 、スチレン共重合合成樹脂)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、AES(アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン)の特長を解説します。
PMMA(アクリル樹脂)
PMMA、いわゆるアクリル樹脂はポリカーボネートと同様、透明度が高い素材です。ただし、アクリル樹脂は割れやすいといった難点があるため、各種機械のカバー、車やバイクのウインカーレンズ、LEDライト部材などの透明部品には耐衝撃性の高いポリカーボネートが採用されています。アクリル樹脂はアクリル板をはじめ窓材や照明器具などの建材、電子部品、道路標識などの産業用資材に使用されています。
PVC(ポリ塩化ビニル、塩ビ)
ポリ塩化ビニル、通称塩ビは、ポリカーボネートと同様、自己消火性がある難燃素材ですが、より耐熱性が求められる場合は、ベークライトのほうが適材です。 塩ビの耐熱は約70°ですが、ベークは約130°まで耐えることができます。コストはポリカーボネートのほうが高価ですが、耐衝撃性と耐熱性に優れており、コストパフォーマンスは高いといえます。
ABS(アクリロニトリル 、ブタジエン 、スチレン共重合合成樹脂)
ABSはアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの3種類の材料をブレンドしたもので、様々な形状の成形や光沢仕上げに用いられます。ポリカーボネート同様、耐衝撃性に優れますが、2つの素材を比較するとポリカーボネートのほうが圧倒的です。透明度については、ABSもポリカーボネート同様、光沢があり透明にも見えますが、やや色味がついています。また、ポリカーボネートは不燃性に優れますが、ABS樹脂は燃焼するプラスチックです。耐薬品性はABS樹脂は強酸に弱く、有機溶剤に対してはひび割れや溶解を引き起こします。ポリカーボネートもアルカリ性の薬剤、溶剤には弱い性質があります。なお、ABSによく似た樹脂でASA樹脂があります。ASAはABS樹脂の耐候性を改良・向上させた樹脂で、ABS樹脂と同様、着色性、成形性、強度を保持した熱可塑性スチレン系樹脂です。ASAは自動車のドアミラーやボディーなどの外装部品や建材などの用途があります。
PS(ポリスチレン)
ポリスチレンもポリカーボネートと同様、高い透明性と耐衝撃性を兼ね備えています。ポリスチレンは汎用ポリスチレンとゴム成分を加えて 衝撃性を改良した乳白色の耐衝撃性ポリスチレンがあり、特に耐衝撃性に特化した後者は、ポリカーボネートと同様の用途があります。ただし、ポリスチレンとポリカーボネートを耐衝撃性で比較すると、やはりポリカーボネートのほうが優勢です。
PP(ポリプロピレン)
ポリプロピレンもポリカーボネート同様、耐衝撃性や耐久性に優れますが、比較すると上回ることはありません。ただし、ポリプロピレンは耐疲労性、優れた耐薬品性に加え、加工性に優れます。ポリプロピレンは処理の容易さという点ではポリカーボネートを上回る場合もあり、包装産業などでひんぱんに使用されています。
PE(ポリエチレン)
ポリエチレンは世界のプラスチック生産量の約3割を占めるほどの生産量を背景に原料価格の安い熱可塑性樹脂です。安いうえに加工性に極めて優れることからレジ袋、ラップ、タッパーなどの原材料となっています。また薬品に反応しにくい性質であるためシャンプーや洗剤などのプラスチック容器としても利用されています。低温には強い一方、70℃以上の高温環境には弱いといった難点がありますが、加工性はポリカーボネートを上回ります。
AES(アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン)
AESは透明性や強度といった面でポリカーボネートに劣りますが、対候性やコストを比較するとポリカーボネート以上といえます。AESはABSと非常によく似た素材で、これといった難点のない材料であるため、屋外で使用される製品において、材料着色材として広く使用されています。
ポリカーボネートを使った真空成形は三光ライト工業にお任せください
三光ライト工業はポリカーボネートを使った高度な真空成形技術でお客様のご要望に的確にお応えします。弊社は金型(真空成形金型を除く)の製造から成型品の試作、量産に至るまで社内で一貫対応いたしますので、短納期、低価格を実現します。多品種少量生産、多品種小ロット生産もお任せください。真空成形材料についても軟質と硬質、結晶性樹脂と非晶性樹脂、厚板と薄板を問わず幅広い知見を有していますので、何でもご相談ください。
弊社の製品実績は幅広く、携帯電話筐体、携帯電話電池カバー、車載用内装部品、防水コネクターカバー、真空成形トレイ、工業用トレイ、ブリスターパック(成形した部分に商品を収め、成形品と台紙を熱圧着した製品)など様々な製品をご提供します。また、弊社は「アッセンブリ(組立加工)」にも幅広く対応可能です。プラスチック成形品の製造だけでなく、塗装、印刷などの2次加工はじめ簡単なアッセンブリやパッケージ品も一貫で製作しています。シート貼り付け、インサート品熱圧入、超音波接着、パッケージ品製作、各種試験、検査など、様々な工程を組み合わせることができますのでお申し付けください。また弊社は真空成形はもとより、射出成形や2色成形、LIM成型にも対応(ブロー成形は除く)いたします。インサート成形も行っており、プレス加工した金属端子のインサートでも豊富な実績があります。規格品だけでなく、オリジナル製品もご要望に応じて製造します。大物、小物、厚物、薄物問わずご依頼ください。全自動射出成形機や全自動2色成形機、3Dスキャナ型3次元測定機を含む測定器類、金型製作機器など、弊社の充実した設備は弊社のホームページまたは会社案内をご覧ください。
また、弊社はプラスチック塗装をはじめとした製品の加飾、表面処理技術でも弊社は高機能の塗装設備を所有しています。加えて、弊社のトリミング機能付きの高速真空成形機は成形機とトリミング装置を同じフレーム上に設置し、全自動でトリミングが可能で、設定量を搬出可能な最新の真空成型機です。成形や抜きの工程を全自動化し、10段重ねに対応したトリミング機能付き高速連続真空圧空成形機となっています。御連絡お待ちしております。